基本情報
- 試験日:2019年5月(学科試験)、2019年9月試験(実技試験)
- 投稿者:Kenさん
- 勉強形態:独学
- 勉強期間:約8か月(2019年1月~9月)
- 勉強時間:約300時間(学科+実技)
はじめに
この合格体験記を書いている時点で私は2年目の金融機関職員です。
いち金融機関職員として毎日日経を読んでいるのですが、ある日、記憶に残る記事というのは自分の興味のあるものばかりということに気づきました。
予備知識のない状態で新聞を読んでもその内容はすぐに忘れてしまうため、自分の視野を広げることに一役買っているとはいえないわけです。
ということは、「広く知識をつけることができればモノの視え方も変わってくるのではないか」と思うようになりました。本を読むことが手っ取り早いのですが、もっと強制力がほしい…そこで目を付けたのが資格試験です。
過去に興味本位でFP2級を取得していたこともあり、上位に該当する資格としてFP1級が浮かびましたが、「受験資格が複雑で、学科試験は非常に難関で、実技試験は面接をパスする必要があるよく分からないもの」というイメージがあったため、初めは受験する気なんて全くありませんでした。
しかし、よくよく調べてみると以下の3つのことが分かり、これは天が私に「受験しろ!」と言っているに違いないと思い、FP1級の受験を決心しました。
- 金融機関の勤務期間が実務経験にカウントされること
- 1級の学科試験が5月にも実施されるようになり、4月1日時点で金融機関に1年以上勤めていれば受験資格を得られること(→金融機関2年目の職員が5月に受験できるようになった)
- 仮に5月の学科試験に合格すれば、9月の実技試験(FP協会)を通過することによって面接試験を受けずに最短でFP1級を取得できること
以下、勉強法などをまとめさせていただきます。長文になりますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
FP1級の実技試験は、金財で受験する場合は面接形式になりますが、FP協会で受験する場合は記述式になります。どちらを受験するかは受験生が自由に選択することができます。
使用したテキスト・電卓
- ’17~’18年版 合格ターゲット1級FP技能士 特訓テキスト(きんざい)
- ’17~’18年版 合格ターゲット1級FP技能士 精選問題集(きんざい)
私はケチなので、資格勉強用のテキストは中古で買ってしまいます。FP1級は法改正が重要になってくると聞いたことがあり、古いテキストは不安でしたが特段問題はありませんでした。
ただ、2019年7月に民法相続関連に大幅改正が入りましたので、これから勉強を始める方は最新版を買って勉強することをおすすめします。
内容については「これを読めば絶対に受かる!」とは断言できませんが、FP1級の範囲をひととおり学ぶにはいいテキストだと思います。
- 電卓:JS-20WK(CASIO)
電卓はCASIOの「JS-20WK」を使いました。正直ここまで高価なものを使う必要性は全くないと思いますが、「いいモノを使うとモチベーションが上がる人」はぜひ使ってみてください。不満な点は全くありません。電卓とは思えない叩き心地です。
学習の進め方
FP1級の勉強自体は2019年の1月からスタートしましたが、証券アナリストやTOEICの勉強も並行して行っていたので、実質的な勉強期間はもっと短いです。
トータルの勉強時間は、学科は1月から4月まで1日平均1.5時間、5月から1日平均3時間、実技は8月から1日平均1時間として…300時間くらいでしょうか。
2019年1月~4月
まずは、基礎編の対策としてインプット作業を開始しました。1分野あたりの具体的なスケジュールは以下のとおりです。
- テキストを読んで要点をまとめたオリジナルノートをWordで作成
- ある程度インプットしたら問題集を解く
- 関連分野の過去問を解く
上記の一連の流れを1分野あたり2週間ほどかけて6分野を繰り返していました。
一からノートを作るのは骨の折れる作業ですが、私にはこのスタイルがあっているような気がします。分厚いテキストをいちいち開くのは億劫ですし、文字が小さくて読みづらい部分もあります。読んで理解しにくい部分は画像を張り付けたり、表を作成したりしました。
FP1級レベルになると、テキストどおりの問題が出ることは少ないです。解けなかった部分については自分のノートに書き込むようにしていました。
また、いくらノートを作っても覚えられない部分が出てきます。例えば、私は各譲渡所得の特例を受けるための条件がまぎらわしすぎてあやふやなままになっていました。
その対策として、マクロで作成された単語帳をダウンロードし、そこにあやふやな部分を書き込んで頭に無理やり叩き込んでいました。様々な手法でインプットを試みるのも覚えるための有効な手段だと思います。
マイクロソフトが公開している学生向けのテンプレートを使いました。ランダムで出題にも変更できるので、「単語帳を使うと順番で覚えてしまう」私にとって非常に役に立つものでした。
このご時世、アプリでも勉強できますし、固定観念にとらわれず使えるものは何でも使ってみるのがいいかもしれません。
2019年5月~
応用編は(過去に出題された問題と)似たような問題が出ると聞いていたので、一気に詰め込むのが効率的だと思い、ゴールデンウィークから対策を始めました。
過去問をダウンロードし、まずは解いてみる。当たり前ですが、手も足も出ないので、解答を読んで解き方を覚える。2日後、同じ問題を解いてみる。上記の流れを1日2~3題、ひたすら繰り返しました。
また、このときに特に気を付けていたのは以下の2点です。
- すぐに分かった気にならず、手を動かし途中式を書いて、最後まで解答を出し切ること。
- 答えを出すための大筋が分かっていても、細かい部分の取りこぼしや計算ミス等が出るため、答案を作り切ること。
実際に、相続税の基礎控除や2割加算を忘れがちといった自分のクセに気が付くことができたので、1問1問にかける時間は長くなりますが、この方法で対策してよかったと思います。
この時点で応用編は順調に仕上がってきたのですが、基礎編には結構苦戦していました。もちろん網羅的に記憶はしている(FP2級程度なら即答できるレベル)のですが、過去問を通しで解いてみると半分行くか怪しい…。
試験が近づくにつれて不安が大きくなりましたが、分からなかった部分は自作ノートに書き込み、「過去問と同じような問題は絶対に間違えない」という気概を持って勉強を続けました。
試験の1週間前
FP1級は法改正の部分がよく問われることを耳にしていたので、試験1週間前から法改正の対策をしました。
ネットで探すとFP受験用の法改正をまとめたサイトがいくつか出てくるので、そのサイトを毎日眺めていました。何となく「イデコプラス」と「教育訓練給付金の増額」が出そうとヤマを張っていました。
また、この時期になってもどうしても理解できない部分(投資信託の税制や住宅ローンが残っているマイホーム売却時の譲渡損失の取扱いなど)は、思い切って捨てることも考えました。
しかし、「もし試験で出題され、そこが合っていたら合格できたかもしれない」という状況になったら死んでも死にきれないと思い、最後は理解にこだわらずに数字や制度などを割り切って暗記することにしました。
学科試験(2019年5月・金財)の1日の流れ
この部分のみ、臨場感を出せればという思いのもと、常体で失礼いたします。
5:00 起床
起床。単語帳のやり直しと2017年1月の基礎編の問題を通しで解く。7割5分取ることができ、今日も見たこととある問題が出ますように…と願いを込める。
9:00 出発
試験会場に向けて出発。
9:10 到着
試験会場に到着。緊張して文字が頭に入ってこないので、音楽を聴きながらぼんやりすごす。受験生の年齢層は幅広いが、どちらかというと年配の方が多め。空席も目立っていた。
10:00 基礎編の試験開始
- イデコプラスが出るという予想は当たったものの、思っていたよりも詳しく聞かれ答えが導けない。対象企業の従業員は確か100人以下で、掛金を給与にすると従業員の税金増えそうだから違うと思うし…からの2択を外す。
- 教育訓練の増額も出ると予想していた。40万円×3年もしくは56万円×3年、選択肢にも168万円があるしこれはもらった。
- 生命保険金は責任準備金の〇割、損害保険金は保険金の〇割補償というのは今朝やったところだ、ラッキー。
- 結婚・子育て資金の使い道…聞いたことがない。子の医療費は該当することを聞いたことがあるし、披露宴なんて開かなくてもいいから後者は該当しないよね(→小学生までの医療費のみが該当、披露宴の資金は該当するので間違い)。
- 類似業種比準方式の算出方法が出題されているということは、午後の応用編では相続税の算出が出そうだな。2割加算などトラップがたくさんあるので、ある程度、基礎編で取っておきたいな…などいろいろなことを考えながら解いていました。
11:20 退出
分からなかったor微妙な問題が23個あったにも関わらず、爽快感を感じていた。
近くのコンビニで昼食をとりながら休憩。2択で迷った問題の解答を調べてみると、ことごとく外していることが分かり、応用編でしっかり取らなければいけないな、と気を引き締める。
13:30 応用編の試験開始
- 第1問&第2問:過去問どおり。ここは取っておきたい。
- 第3問:青色じゃない事業専従者控除だ。事業所得÷(事業専従者数+1人)と86万円のうち少ない方。応用編で問うてくるのはしんどいな。あと、退職所得ってどの段階で1/2するんだっけ。総所得金額を算出する際か?(→そもそも退職所得は分離所得なので総所得金額に含めない。ここでごっそり点を落としました。)
- 第4問:譲渡所得6,000万円超えている…。軽減税率の特例で、この出題パターンは初めて見た。
- 第5問:案の定、相続税の総額を算出させる問題。計算が煩雑になるからケアレスミスに気を付けよう。
上記のようなことを考えながら解いていました。呼吸を忘れるくらい集中しており、本当に楽しかったです。
16:00 試験終了
この上ない爽快感を感じていた。同時に、糖分を使い果たしてしまい動けなくなる。スーパーで寿司を買って帰りました。
学科試験の結果
結果として、200点中137点で合格することができました。おそらく基礎編56点、応用編81点で、理想的な点数の取り方だったと思います。
応用編では手を動かして答案を作ることを普段から意識していたので、ケアレスミスはほぼゼロで終えることができました。
逆に、基礎編はしっかり勉強していても高得点を取るのは難しいと感じました。聞いたことのない法律が出題されますし、少しでもあやふやな部分はほぼすべて間違えていました。
FP1級の学科試験は、基礎5割・応用7割で受かるのが一番スマートのように思います。
実技試験(2019年9月・FP協会)について
こちらは特段意識せず、8月ごろから過去問を3周しただけです。また、実技試験は毎年、関連法規について論述が出題されるので、過去に出題された部分のまとめを別途作成しました。
今回の試験では、過去にも出題されたことがある「FP業務と税理士法について」という論述問題が出題されましたが、ほぼ完ぺきに書くことができました。
もう1問のNISA関連の問題は異様に細かかったのですが、6割を割ることはないだろうといった感じでした(実技試験の合格率は9割超。受験料をお布施しただけです。)。
結果は無事合格。A3の合格証書に驚いて点数は何点だったか覚えていません。(金財の実技試験の)面接なんて受けてたまるかと思っていましたが、いざ筆記で実技試験を通過してみると、面接を受けてみたかったと思ってしまいます。
おわりに
FP1級の勉強を開始した2019年1月から、最終的な合格発表がされた2019年11月までの10ヶ月間、何とか走り切ることができました。
ほっとすると同時に、FP協会の実技試験があまりにもあっけなさすぎて、少し物足りなさを感じています。
FP1級はやはり学科試験が最初にして最大の壁になります。私は運よく1発通過できたのですが、以下の2点を常に意識して勉強に取り組んだのがよかったのかなと思います。「急がば回れ」を身に染みて感じました。
- 過去問を徹底的に解き、同じ問題を間違えないように意識していたこと。
- 応用問題においては、手を動かし答案を最後まで作り切っていたこと。
また、「視野を広げる」ことを目的として受験を決意したのですが、その目的は大いに達成できたように感じます。
2019年12月現在、NISAの非課税期間が終了したり、在職老齢年金の引き上げが議論されていたりと様々な制度改正がなされていますが、これらのニュースが目に付くようになりましたし、自分の知識が早くも陳腐化しかけていることに焦りを感じているところです。
FP1級は独占資格ではないため、これ1つで何ができるというわけではありません。しかしながら、引き出しだけはたくさんできますので、次の一歩を容易に踏み出すことができるようになると思います。
社会保険制度に興味がわけば「社労士」、会計・税制度に興味がわけば「税理士」や「公認会計士」、もっと網羅的な知識がほしいと思えば「中小企業診断士」、不動産を学びたければ「宅建士」、突然出てくるCAPMやインタレスト・カバレッジ・レシオ等が気になれば「証券アナリスト」と、FP1級で得た知識・学び・長時間勉強するための体力などを存分に生かせるフィールドが待っているのではないでしょうか。
かくいう私も宅建と証券アナリスト1次は受験済みで、CFA Level1受験に向けて英語と向き合っているところです。資格取得が業務に直接結びつくことはありませんが、知識を積み重ねて豊かな人間になれるように、これからも勉学に励んでいく所存です。
Kenさんが使われた教材や電卓のまとめ
- テキスト:合格ターゲット1級FP技能士 特訓テキスト
- 問題集:合格ターゲット1級FP技能士 精選問題集
- 電卓:CASIO JS-20WK
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