FP1級の試験制度に関するQ&A(16)
FP1級の学科試験は、次のいずれかに該当する者に受験資格が与えられます。
- FP2級試験の合格者で1年以上の実務経験を有する者
- FP業務に関し5年以上の実務経験を有する者
- 厚生労働省認定金融渉外技能審査2級の合格者
1つめの「FP2級試験の合格者で1年以上の実務経験を有する者」は分かりやすいですよね。FP2級に合格し、銀行や会計事務所などFPの業務と関連がある仕事を1年以上している(またはしていた)人にFP1級の学科試験の受験資格が与えられます。
FP2級と大きく異なるのは、FP2級は「FP3級の合格」だけで受験資格が与えられるのに対して、FP1級は「FP2級の合格+1年以上の実務経験」が必要になる点です。
2つめの「FP業務に関し5年以上の実務経験を有する者」ですが、銀行や会計事務所などFPの業務と関連がある仕事を5年以上している(またはしていた)人は、FP3級・FP2級を飛ばしていきなりFP1級から受験することができます。
最後の「厚生労働省認定金融渉外技能審査」というのは、以前に金財が実施していたファイナンシャル・プランニングに関する試験のことです(通称・金財FP)。この試験は2001年に終了しているため現在は受験できませんが、救済措置の一環でこの試験の2級に合格している人にはFP1級の受験資格が与えられます。
FP1級の学科試験は、金財により1年度に3回(5月・9月・1月)実施されます(※FP協会では実施されません)。
FP1級の実技試験は、FP協会で1年度に1回(9月のみ)、金財で1年度に3回(6月・10月・2月)実施されます。なお、実技試験は受験資格があればFP協会・金財のどちらを受験しても構いません。
ちなみに、2018年度までは金財の学科試験は1年度に2回(9月・1月)、実技試験も1年度に2回(6月・2月)実施されていましたが、2019年度からどちらも1回分ずつ増えて合格のチャンスが広がりました。
金財が実施する学科試験の年間受験者数は2万人~3万人で、実技試験の年間受験者数はFP協会が約1千人、金財が約2千人ぐらいです。
合格率に関しては、金財が実施する学科試験が「10%前後」とFPに関する試験の中で一番低い数字になっています。
一方、金財の実技試験(資産相談業務)の合格率は約80%、FP協会の実技試験(資産設計提案業務)にいたっては約90%とかなり高い数字になっています。
実務経験に関しては、かなり幅広く認められています。銀行や会計事務所などFPの業務と関連がある仕事はもちろんのこと、一般事業会社の経理部員や金融系のコールセンターにおける顧客対応なども認められます。
なお、実務経験は自己申告制で第三者による証明等は不要です。自身の職歴・経験が実務経験としてカウントできるかどうか不安な場合は、FP協会または金財に直接お問い合わせください。
FP1級の学科試験は1年以上の実務経験がないと受験することができません。
実務経験がない場合は「FP3級合格→FP2級合格→AFP認定→CFP合格→(FP1級学科免除)→FP1級実技」というルートでFP1級の合格を目指すのが一般的です。
金財の学科試験は1年度に3回(5月・9月・1月)実施されますが、問題・解答のベースとなる法令基準日は試験日ごとに異なります。
- 5月試験:前年の10月1日
- 9月試験:その年の4月1日
- 1月試験:前年の10月1日
また、FP協会の実技試験は1年度に1回(9月)実施されますが、問題・解答のベースとなる法令基準日は金財の学科試験と同様、その年の4月1日です。
なお、金財の実技試験も1年度に3回(6月・10月・2月)実施されますが、こちらは原則として、試験日当日が法令基準日になります。
できます。試験日の翌営業日に公表される模範解答ですぐに自己採点できるように、答案を提出する前に自分の解答を問題用紙の白紙部分にメモっておきましょう。
学科試験および金財の実技試験は200点満点中120点(得点率60%)、FP協会の実技試験100点満点中60点(得点率60%)が合格ラインになります。
どちらも6割以上取れれば合格ですが、合格率の調整を行うため配点箇所は公表されていません。
FP1級の学科試験と実技試験は別日に行われますし、そもそも学科試験に合格しないと実技試験の受験資格が得られないので、同時に受験するのは不可能です。
FP協会の実技試験は、FP3級・FP2級と同様にマークシート形式の筆記試験です。問題の難度は「FP2級に毛が生えた程度」で、学科試験の難度と比べるとかなりの差があります。
一方、金財の実技試験は面接形式の口述試験です。午前と午後に1回ずつ(合計2回)異なる設例に基づいた面接が行われ、最終的な合否が決まります。受験するさいの負担はこちらのほうが大きいです。
国家資格であるFP1級は一度合格したら一生有効で、継続教育や更新手続き等も不要です。なお、民間資格であるAFP・CFPは定期的に継続教育研修を受け、更新手続きをする必要があります。
FP1級はFP関連資格の最高峰に位置づけられるため、特にFP事務所や金融・保険関係の会社に就職・転職するさいに高く評価されます。
なお、同じビジネス系の資格である簿記や宅建などと組み合わせるとFP1級の評価がさらに高まるので、時間に余裕のある方は他のビジネス系の資格にも挑戦しましょう。
名刺には「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」と書くのが一般的です。なお、実技試験の業務名の表示は任意なので「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)」と書くこともできます。
履歴書には「●年●月 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 合格」と書くのが一般的です。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士の英語表記は「1st grade Certified Skilled Worker of Financial Planning」です。
FP技能検定には名称独占(=合格しないとFP技能士と名乗れない)しかなく、宅建士や税理士、会計士のような業務独占(=合格しないと一定の業務ができない)はありません。
FP協会・金財ともに有料(2,000円・非課税)で合格証書を再発行してもらえます。また、合格したことを証明する書類(合格証明書)は、FP協会・金財ともに無料で発行してもらえます。
FP1級の勉強方法に関するQ&A(5)
上述のとおり、FP1級の受験コースは2つあります。
ひとつは「①FP2級合格後にそのままFP1級の学科試験→実技試験」と進んでいくコース、もうひとつは「②FP2級合格後にAFP登録→CFP試験→(1級の学科試験免除)→1級の実技試験」と進んでいくコースです。
①のコースの合格に必要な勉強時間は、地頭の良さや勉強期間、年齢、FP関連の知識の有無などによって大きく変わりますが、一般的には300時間~500時間がひとつの目安になると言われています。
②のコースは1級の実技試験だけで考えれば20時間前後の勉強でじゅうぶんですが、その前にCFPの6科目に合格する必要があるので、CFP試験とトータルで考えるとだいたい同じぐらいの勉強時間が必要になります。
- FP3級(学科+実技):50時間前後
- FP2級(学科+実技):3級合格+150時間前後
- FP1級(学科+実技):2級合格+300時間~500時間
- CFP(6科目):2級合格+300時間~500時間
- FP1級(実技のみ):CFP合格+20時間前後
FP1級は市販の教材が充実しているので、独学でじゅうぶん合格可能です。テキスト・問題集・電卓の3点をお手元にご用意ください。
独学で勉強するのは不安という方には、TACや大原などの通信講座や、独学と通信講座の良いとこどりをしたTACの「独学道場」の受講をおすすめします。
人気があるのは、TAC出版の「みんなが欲しかった! FPの教科書 1級」「みんなが欲しかった! FPの問題集 1級」です。教科書が2冊、問題集が1冊の合計3冊の構成になっています。フルカラーでとても使いやすいです。
予想問題集には出題可能性の高い問題が多数収載されています。直前期の総仕上げにぴったりな教材なので、時間に余裕があればぜひやってください。
なお、予想問題を解くさいのポイントは「必ず時間を計って解く」「間違えたところは必ずテキストに戻って復習する」「最低でも2回ずつ解く」の3点です。
まずはテキストをひと通り読んで全体像を把握し、次にテキスト・問題集を使って単元ごとに「テキスト熟読→問題演習→復習」を繰り返して1周しましょう。時間に余裕があればさらに問題集のみをもう1周して、最後に予想問題集で総仕上げをすればバッチリです。
FP試験ナビでは合格者の方々にご投稿いただいた合格体験記を公開しています。合格体験記には勉強法のヒントがたくさんつまっているので、ぜひこちらもあわせてご確認ください。