四択問題
分野:金融
上場株式等の譲渡および配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く)に係る所得に対する所得税の課税等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、特定口座のうち、源泉徴収がされない口座を簡易申告口座といい、源泉徴収がされる口座を源泉徴収選択口座という。
- 上場株式等に係る配当所得について、総合課税を選択して確定申告をした場合、上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算することはできない。
- 上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算してもなお控除しきれない上場株式等に係る譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、翌年以後5年間にわたって繰り越すことができる。
- 源泉徴収選択口座内における上場株式等の譲渡益と、当該口座に受け入れた上場株式等の配当等に係る配当所得について、いずれかのみを申告することはできない。
- 簡易申告口座では、源泉徴収選択口座とは異なり、その年中における口座内の取引内容が記載された「特定口座年間取引報告書」が作成されないため、投資家自身でその年中の上場株式等に係る譲渡所得等の金額を計算する必要がある。
解答
1
解説
- 〇(適切):記述の通りです。上場株式等の配当所得については、総合課税・申告分離課税・申告不要制度の3つから課税方式を選択することができます。このうち、配当所得を上場株式等の譲渡損失と損益通算するためには、必ず申告分離課税を選択して確定申告を行わなければなりません。総合課税を選択した場合、配当控除の適用を受けることはできますが、分離課税である譲渡損失と損益通算することはできません。
- ✕(不適切):「翌年以後5年間にわたって繰り越すことができる」という点が誤りです。正しくは「翌年以後3年間にわたって繰り越すことができる」です。
上場株式等の譲渡損失のうち、その年の配当所得等と損益通算してもなお引ききれない損失額は、確定申告を行うことを要件として、翌年以後、3年間にわたり繰り越すことができます。繰り越した損失は、翌年以降の上場株式等の譲渡益や配当所得から控除することができます。 - ✕(不適切):「いずれかのみを申告することはできない」という点が誤りです。正しくは「いずれかのみを申告することができる」です。
源泉徴収選択口座(源泉徴収ありの特定口座)内に受け入れた上場株式等の譲渡益と配当所得については、原則として確定申告不要制度が適用されますが、あえて確定申告をすることも可能です。そのさい、口座内の譲渡益と配当所得の「両方を申告する」ことはもちろん、「譲渡益のみを申告する」「配当所得のみを申告する」というように、投資家の税務上の有利不利に応じて別々に申告の有無を選択することも認められています。 - ✕(不適切):「『特定口座年間取引報告書』が作成されないため、投資家自身でその年中の上場株式等に係る譲渡所得等の金額を計算する必要がある」という点が誤りです。正しくは「簡易申告口座であっても『特定口座年間取引報告書』が作成されるため、投資家自身で計算する必要はない」です。
特定口座制度は、証券会社が投資家に代わって年間の譲渡損益を計算する制度です。源泉徴収選択口座(源泉徴収あり)だけでなく、簡易申告口座(源泉徴収なし)においても証券会社が特定口座年間取引報告書を作成し、投資家に交付します。投資家はこの報告書を用いて確定申告を行うことができるため、自身で個々の取引から所得金額を計算する手間はかかりません。
肢①の補足
所得税法上、異なる所得グループ間の損益通算には厳格な制約が設けられています。上場株式等の譲渡損失は「申告分離課税」という制度の中で計算される性質の損失です。一方、配当所得について「総合課税」を選択した場合、その配当所得は給与所得等と同じグループに属することになります。分離課税の損失を総合課税の所得から差し引くことは制度上認められていないため、損益通算を行うのであれば、配当所得も譲渡損失と同じ「申告分離課税」のグループに揃える必要があります。
肢④の補足
上場株式等を管理する口座には「一般口座」と「特定口座」が存在します。
一般口座で取引を行った場合、金融機関は損益計算を行わないため、投資家本人が全取引の約定代金や取得費を自己申告で計算して確定申告書を作成する義務を負います。これに対し、特定口座(簡易申告口座を含む)を利用する場合は、租税特別措置法の規定に基づき、金融商品取引業者(証券会社)が法定書類である「特定口座年間取引報告書」を作成する義務を負います。これにより、源泉徴収の有無にかかわらず、投資家側の計算負担が大幅に軽減されます。
田口先生
特定口座や一般口座といった課税口座内で生じた上場株式等の譲渡損失は、確定申告を行うことで他の課税口座の譲渡益等と損益通算することが可能です。しかし、NISA(少額投資非課税制度)口座は税務上独立した非課税枠であるため、同口座内で生じた譲渡損失は他のいかなる口座(特定口座・一般口座)の利益とも損益通算することはできません。NISAの「利益が非課税になる代わりに、損失もなかったものとされる」という基本原則を改めて確認しておきましょう。
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