2026年5月公表分

【試験問題解説】FP2級 学科試験 2026年5月公表 問31(所得税)

四択問題

分野:タックス

所得税の基本的な仕組みに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 所得税の納税義務者は、日本国籍を有する個人および日本国内に本社・本店を有する法人に限られる。
  2. 納税者が日本国内に住所、居所および事業所を有する場合、所得税の納税地は住所地となり、居所地や事業所の所在地を所得税の納税地とすることはできない。
  3. 各種所得の金額の計算上、収入金額には、原則として、その年において収入すべきことが確定した金額から、未収入の金額を控除した額を計上する。
  4. 所得税額の計算上、課税総所得金額に乗じる税率には、課税総所得金額が大きくなるにつれて段階的に税率が高くなる超過累進税率が採用されている。



解答

4

解説

  1. ✕(不適切):「日本国籍を有する個人および日本国内に本社・本店を有する法人に限られる」という点が誤りです。正しくは「国籍にかかわらず日本国内に住所等を有する個人が対象となるほか、利子や配当等を受け取る内国法人・外国法人も納税義務者となる」です。
    所得税は「個人」の所得に対して課される税金ですが、国籍は要件とされておらず、日本国内に住所を有するなどの「居住者」であれば外国人であっても納税義務を負います。また、法人が得る所得は原則として「法人税」の対象となりますが、預貯金の利子や株式の配当等を受け取るさいには源泉所得税が徴収されるため、法人も所得税の納税義務者に含まれます。
  2. ✕(不適切):「居所地や事業所の所在地を所得税の納税地とすることはできない」という点が誤りです。正しくは「所轄税務署長に特例の届出を行うことで、居所地や事業所の所在地を納税地とすることができる」です。
    所得税の納税地は、生活の本拠である「住所地」とするのが原則です。しかし、事業を行っている個人が店舗や事務所の所在地を所轄する税務署で申告を行いたい場合など、納税者の利便性を考慮し、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出することを要件として、例外的に居所地や事業所等の所在地を納税地として選択することが認められています。
  3. ✕(不適切):「未収入の金額を控除した額を計上する」という点が誤りです。正しくは「未収入の金額を控除せず、その年において収入すべきことが確定した金額をそのまま計上する」です。
    所得税の計算における収入金額の計上時期は、現金を受け取った日ではなく、権利が確定した日を基準とする権利確定主義が採用されています。本肢のように、収入すべきことが確定した金額から未収入の金額を差し引いてしまうと、結果的に、現実に受け取った現金のみを計上する現金主義になってしまい、税法のルールから逸脱します。
    年末時点でまだ現金を受け取っていない未収金(売掛金など)があっても控除せず、その年中に収入すべき権利が確定している全額を収入金額として計上する必要があります。
  4. 〇(適切):記述の通りです。所得税では、所得が多く負担能力が高い人ほど高い割合で税を負担するという「応能負担の原則」に基づき、課税総所得金額が大きくなるにつれて段階的に税率が高くなる超過累進税率(5%〜45%の7段階)が採用されています。
肢③の補足

仮に、所得の計上基準を「現金を受け取った時点(現金主義)」にしてしまうと、納税者が意図的に代金の受領を翌年に遅らせることにより、容易にその年の利益を圧縮し、課税を逃れることが可能になってしまいます。このような不公平を防ぐため、所得税法では客観的な取引の事実に基づき、請求権が発生した時点で所得を認識する「権利確定主義」が採用されています。

肢④の補足

所得税の税率構造において、仮に、単純累進税率(一定の所得を超えたら、その全体の金額に対して一律に高い税率を適用する方式)を採用した場合、深刻な不都合が生じます。例えば、所得195万円以下の税率を5%、195万円超の税率を10%とした場合、所得194万円の人の税額は97,000円ですが、所得が196万円に増えると全額に10%が適用され、税額が196,000円に跳ね上がります。結果として、額面の所得は2万円しか増えていないのに税金が約10万円も増え、手取り金額が減少するという逆転現象が起きてしまいます。
このような事態を防ぐため、我が国の所得税では「境界線を超えた部分(上の例なら1万円分)に対してのみ、より高い税率を適用する」という超過累進税率が採用されており、上述の逆転現象が起こらない仕組みになっています。

田口先生1
田口先生
所得税は、原則として、個人が1月1日から12月31日までの暦年単位で得た所得に対して課されます。したがって、例えば「個人事業主の所得税の計算期間については、納税地の所轄税務署長への届出により、任意に定めることができる。」という正誤問題が出題された場合、解答は「不適切」になります。

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