四択問題
分野:相続
民法上の遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 遺言者の相続人が、自宅で発見した自筆証書遺言を家庭裁判所の検認を受けずに開封した場合、その遺言は無効となる。
- 遺言者が自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成する場合、当該目録への署名・押印は不要である。
- 公正証書遺言を作成する際には、証人3人以上の立会いが必要である。
- 公正証書遺言を作成した遺言者は、その遺言を自筆証書遺言によって撤回することができる。
解答
4
解説
- ✕(不適切):「その遺言は無効となる」という点が誤りです。正しくは「過料の制裁を受ける可能性はあるが、遺言は無効にならない」です。
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認の手続きを経る必要があり、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立ち会いのもとで開封しなければなりません。
この規定に違反して勝手に開封した場合、5万円以下の過料に処せられることがありますが、遺言に書かれた内容の効力自体が失われるわけではありません。 - ✕(不適切):「当該目録への署名・押印は不要である」という点が誤りです。正しくは「当該目録の毎葉(各ページ)に署名および押印をしなければならない」です。
自筆証書遺言は原則として全文を自書する必要がありますが、法改正により、添付する財産目録についてはパソコンでの作成や預貯金通帳のコピーの添付が認められるようになりました。ただし、他人が勝手に目録を差し替えるなどの偽造を防ぐため、自書によらない財産目録を添付する場合は、そのすべてのページ(両面印刷の場合は両面)に遺言者本人の署名と押印をすることが義務付けられています。 - ✕(不適切):「証人3人以上の立会いが必要である」という点が誤りです。正しくは「証人2人以上の立会いが必要である」です。
公正証書遺言は、公証人が遺言者から遺言内容を聞き取って作成する、安全性が高く無効になりにくい遺言方式です。作成にあたっては、遺言者が正常な判断能力のもとで自身の意思を伝えているかを確認し、手続きの正当性を担保するために2人以上の証人の立ち会いが法律で求められています。 - 〇(適切):記述の通りです。遺言者はいつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができます。遺言の撤回においては、前に作成した遺言と後に作成した遺言の方式が同じである必要はありません。したがって、先に作成した公正証書遺言の内容を、後から作成した自筆証書遺言によって撤回(変更)することも法的に認められています。
肢①の補足
自筆証書遺言等における家庭裁判所の「検認」は、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名等の現状を明確に確定させ、以降の偽造・変造を防止する「証拠保全」を目的とした手続きです。
本手続きは遺言の成立要件や実質的な有効性を判定するものではないため、検認を経ずに開封された遺言書であっても、その事実のみを理由として直ちに遺言が無効に帰することはありません。しかしながら、検認未了のまま遺言書を開封する行為は民法第1005条に抵触し、過料処分の対象となるため、実務上は厳に慎むべき留意事項とされています。
肢④の補足
内容が矛盾する複数の遺言が存在する場合、民法の規定により、その抵触する部分については後の遺言によって前の遺言が撤回されたものとみなされます。
遺言制度の本質は「遺言者の最終意思の尊重」にあるため、公正証書遺言が自筆証書遺言に優先するといった、遺言の方式(形式)の優劣による格付けは存在せず、一律に作成日時の新旧によって優先順位が決定されます。このルールにより、遺言者は将来における財産構成の変動や推定相続人との関係性の変化に応じ、随時かつ柔軟に遺言内容を更新することが可能となっています。
田口先生
公正証書遺言の作成に「2人以上の証人」が必要とされるのは、遺言の確実性と手続きの現実性を両立させるためです。
証人が1人だけでは、買収や記憶の曖昧さといったリスクに対処できず、本人の真意を客観的に証明する力が不足します。しかし、3人以上に増やすと、利害関係のない第三者を揃える手間や費用負担が重くなり、制度自体が使いにくくなります。
そのため民法は、第三者による相互牽制が機能する最低限の複数であり、かつ無理なく集められる限界のラインとして「2人」という基準を採用しています。
証人が1人だけでは、買収や記憶の曖昧さといったリスクに対処できず、本人の真意を客観的に証明する力が不足します。しかし、3人以上に増やすと、利害関係のない第三者を揃える手間や費用負担が重くなり、制度自体が使いにくくなります。
そのため民法は、第三者による相互牽制が機能する最低限の複数であり、かつ無理なく集められる限界のラインとして「2人」という基準を採用しています。
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