2025年5月公表分

【試験問題解説】FP2級 学科試験 2025年5月公表 問60(事業承継対策)

四択問題

分野:相続

非上場企業の事業承継対策等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 株式の発行会社が、経営者以外の少数株主が保有する自社株式を買い取ることにより、当該会社の株式の分散を防止または抑制することができる。
  2. 経営者への役員退職金の原資を準備する方法として、契約者(=保険料負担者)および死亡保険金受取人を法人、被保険者を経営者とする終身保険などの生命保険に加入することが考えられる。
  3. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けるためには、特例承継計画を策定して、所定の期限までに都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要がある。
  4. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受ける場合、当該非上場株式等の贈与について相続時精算課税制度を選択することはできない。



解答

4

解説

本問は、中小企業のオーナー経営者が次世代へ会社を引き継ぐための事業承継対策の基本手法と、税負担を大幅に軽減できる事業承継税制の要件について問う問題です。

  1. 〇(適切):記述の通りです。経営者以外の少数株主に株式が分散していると、将来の経営権の安定を脅かしたり、重要な経営判断の決議に支障をきたしたりするリスクがあります。そのため、会社自らが少数株主から株式を買い取って金庫株(自己株式)として保有し、後継者へ議決権を集中させていくことは、事業承継に向けた極めて有効な対策になります。
  2. 〇(適切):記述の通りです。経営者の退職金は数千万〜数億円規模になることも多く、その時期に一括で現金を準備するのは会社の財務上困難なケースが多々あります。そこで、会社が契約者および受取人となり、経営者を被保険者とする生命保険(終身保険や長期平準定期保険など)に加入し、将来の解約返戻金や死亡保険金を退職金の原資として計画的に積み立てていく手法は、実務上、ポピュラーな事業承継対策のひとつです。
  3. 〇(適切):記述の通りです。事業承継税制の特例措置は、自社株の贈与や相続にかかる税金を実質的にゼロ(全額猶予)にできる非常に強力な制度ですが、事前の準備が厳格に求められます。この特例の適用を受けるための絶対条件として、認定経営革新等支援機関(商工会議所や税理士など)の指導を受けたうえで特例承継計画を作成し、所定の期限までに都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。
  4. ✕(不適切):「相続時精算課税制度を選択することはできない」という点が誤りです。正しくは「相続時精算課税制度を選択することができる」です。
    事業承継税制の特例による贈与税の納税猶予と相続時精算課税制度は併用することが可能です。本来、暦年課税から相続時精算課税制度への変更は後戻りできない重大な選択ですが、事業承継税制においては、万が一の事態に備えた保険としてこの併用が法的に認められています。この問題は学科試験でよく出題されるので、確実に押さえておきましょう。
田口先生1
田口先生
なぜ、事業承継税制と相続時精算課税制度の併用が認められているのでしょうか。事業承継税制はあくまで税金の支払いを猶予しているに過ぎません。もし後継者が途中で会社を売却したり、代表者を降りたりして特例の要件を満たさなくなった場合、猶予は取り消され、多額の贈与税と利子税を一括で支払う事態に陥ります。
そのさい、もし通常の暦年課税のままだと最高55%の累進税率で計算されて会社が倒産しかねません。しかし、相続時精算課税制度を併用しておけば、一律20%の税率で計算されるため、万が一、特例が打ち切られた時のダメージを最小限に抑えることができます。つまり、併用を認めることで制度を利用しやすくしているのです。

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