四択問題
分野:リスク
契約者(=保険料負担者)を法人とする損害保険に係る保険料等の経理処理に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 被保険者および保険金受取人を従業員全員とする普通傷害保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができる。
- 保険期間5年の火災保険において、5年分の保険料を一括で支払った場合、その全額を支払った事業年度の損金の額に算入することができる。
- 業務用自動車が交通事故により損壊し、法人が受け取った自動車保険の車両保険の保険金の全額を充当して修理をした場合、当該保険金について経理処理をする必要はない。
- 倉庫に保管していた棚卸資産が火災により滅失し、法人が受け取った火災保険の保険金で同一の棚卸資産を取得した場合、当該棚卸資産について圧縮記帳の適用を受けることができる。
解答
1
解説
本問は、法人が契約する損害保険の保険料を一括払いしたさいの経理処理や、保険金を受け取って資産を買い直したさいの税務ルールについて問う問題です。
損金とは、法人税を計算するさいに会社の経費として利益から差し引くことが認められるお金のことです。一方、圧縮記帳とは、火災などで固定資産(建物など)が燃えてしまい、保険金を使って同じような資産を買い直したさいに、一時的に発生した保険金による黒字への課税を将来に繰延べて、会社の税金負担を軽くしてあげる救済制度のことです。
- 〇(適切):記述の通りです。法人を契約者とし、役員や従業員全員を被保険者、その従業員自身(またはその遺族)を保険金受取人とする普通傷害保険の保険料は、従業員への福利厚生を目的としているとみなされます。特定の役員だけを対象にするなどの一部のえこひいきがなく、全員を対象とするものであれば、会社が支払った保険料の全額を福利厚生費として損金の額に算入することができます。
- ✕(不適切):「その全額を支払った事業年度の損金の額に算入することができる」という点が誤りです。正しくは「当期に対応する月数分のみを損金に算入し、翌期以降の分は前払費用(または長期前払費用)として資産に計上する」です。
5年分などの長期の保険料を一括で前払いした場合、まとめて払ったからといって一気に今年の経費(損金)にして税金を減らすことは認められていません。「今年の月数分」と「来年以降の月数分」をきっちり分けたうえで、来年以降の分は会社の資産として計上しておく必要があります。 - ✕(不適切):「当該保険金について経理処理をする必要はない」という点が誤りです。正しくは「受け取った保険金は雑収入などとして益金に算入し、支払った修理代は修繕費として損金に算入する経理処理が必要である」です。
結果的に入ってきた保険金と出ていった車の修理代が同額でプラスマイナスゼロになったとしても、会社の口座を通して事実としてお金が動いている以上、いくら入っきてて、いくら使ったかを帳簿(損益計算書等)に両建てで記録しなければなりません。 - ✕(不適切):「当該棚卸資産について圧縮記帳の適用を受けることができる」という点が誤りです。正しくは「圧縮記帳の対象となるのは固定資産のみであり、棚卸資産は適用を受けることができない」です。
圧縮記帳は、工場や建物などの事業に長期間必要な大きな資産(固定資産)が燃えてしまったときの再建を、国が手助けするための特別な救済制度です。販売目的で持っているだけの在庫(棚卸資産)の焼失には適用されません。
田口先生
会社の経理(企業会計)には「費用収益対応の原則」という大原則があります。今年支払った5年分の保険料は、今年だけでなく向こう5年間の会社の安全に貢献するものです。そのため、効果が及ぶ期間に応じて少しずつ経費にしていかないと、今年の利益だけが不当に少なく計算されてしまい、結果として正しい会社の経営状態を表せなくなるため、一括の損金処理が禁止されています。
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