2025年5月公表分

【試験問題解説】FP2級 学科試験 2025年5月公表 問56(相続税の申告)

四択問題

分野:相続

相続税の申告と納付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 相続税の申告書は、原則として、相続人がその相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、当該相続人の住所地の所轄税務署長に提出しなければならない。
  2. 死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることにより相続税の課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下となる場合、相続税の申告書を提出する必要はない。
  3. 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けた宅地等を相続税の物納に充てる場合の収納価額は、当該特例の適用後の価額となる。
  4. 相続人が相続税の延納を申請する場合に担保として提供する財産は、所定の要件を満たせば、相続人が相続開始前から所有していた財産や共同相続人または第三者が所有している財産であってもさしつかえない。



解答

1

解説

本問は、相続税の申告期限や提出先、非課税枠を適用したさいの申告要否、さらには現金で一括納付できない場合の救済措置である延納と物納のルールについて総合的に問う問題です。

相続税は、遺産分割から納税までを期限内に行う必要があるため、実務上トラブルになりやすい申告先の勘違いや各種特例の適用要件を正確に理解しておくことが求められます。

  1. ✕(不適切):「当該相続人の住所地の所轄税務署長」という点が誤りです。正しくは「被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署長」です。
    相続税の申告と納税は、財産をもらった人(相続人)の住所地ではなく、財産を残して亡くなった人(被相続人)の死亡時の住所地を管轄する税務署に対して行います。
    例えば、各相続人が別々の県に住んでいる場合などに、各自が地元の税務署にバラバラに申告してしまうと、税務署側で遺産全体の状況や基礎控除の計算が合っているかを正確に把握・管理することが難しくなってしまいます。このような理由もあり、提出先は「被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署」に限定されています。
  2. 〇(適切):記述の通りです。死亡保険金には500万円×法定相続人の数という非課税枠があります。この非課税枠を差し引いた結果、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下に収まるのであれば、そもそも相続税は発生しないため申告も不要です。これは、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」といった、申告をして初めて適用される特例とは異なり、生命保険金の非課税枠が申告不要で当然に差し引ける性質のものであるためです。
  3. 〇(適切):記述の通りです。物納とは、延納でも現金で納めきれない場合に、不動産や有価証券などのモノで税金を納める制度です。この物納のさいの財産の評価額は、原則として相続税評価額となります。したがって、「小規模宅地等の特例」を使って評価額を80%(または50%)減額して相続税を計算したのであれば、国に物納として引き取ってもらうさいの価値も、当然にその減額された後の低い価額として計算されます。税金計算の時は価値を低く見積もり、物納で引き渡す時だけ本来の価値で計算して国に高く買い取ってもらうような、納税者に都合の良い扱いは認められません。
  4. 〇(適切):記述の通りです。延納とは、相続税を分割で納める制度です。延納期間中の未払い税金の担保として提供する財産は、必ずしも今回相続で引き継いだ財産である必要はありません。担保としての価値を満たしており、かつ所有者の同意等があれば、相続人が元々持っていた独自の財産はもちろんのこと、他の親族や第三者が所有する財産であっても、延納の担保として提供することが認められています。
納付方法の優先順位
  • 相続税:①現金一括納付→②延納→③物納
  • 贈与税:①現金一括納付→②延納(※物納は不可
田口先生1
田口先生
相続税・贈与税の納付方法の優先順位は上記のとおりです。
相続税は、金銭一括納付が原則です。それが困難な場合に初めて分割払いの延納が認められ、延納によってもなお金銭で納めることが不可能な場合にのみ、最終手段としてモノで納める物納が許可されます。納税者が自由に選択できるわけではありません。
なお、贈与税については、納付税額が10万円を超えていること、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由があるなど、一定の要件を満たせば5年以内の延納が認められますが、物納は認められていません。

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